価値観が変わる体験を生む好奇心の力

エッセイ

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1.好奇心が持つ力 

豊かな文化・生活を生む力


 好奇心は、未知の世界を開く力だ。好奇心は、自分に興味を抱かせる未知の対象に対して抱く、「何が起きるのか、どうなっているのか、なぜそうなるのか、どのように活用できるのか」といった疑問に、自発的な調査・学習を通して答えを出そうとする、人間の根源的な欲求である。
 
 人類が現在の豊かな文化レベルに到達するまでに、多くの発見や発明が先人たちによってなされた。そして、それらを積み重ね、人間は長い時間を掛けて、常に未知の領域に染み出す形で文化を発展させてきた。この先人たちの発見や発明の原動力こそ好奇心である。
 
 人は、好奇心を原動力として科学技術を発展させ、現在の便利な生活を築き上げてきた。また、多くの概念や表現方法を生み出し、哲学や芸術を日常生活に浸透させることで、人の情緒を豊かにしてきた。
  
 発見や発明は、天才と呼ばれる人々によってなされたものもある。しかし、発見や発明の多くは、普通の人々が、日常生活の中で偶然見つけたもの、知恵を絞って工夫を重ねたものだ。好奇心は、特別な人の能力では無く、誰もにでも生まれながらにして備わった能力なのだ。
 
 この世は未だに未知のもので溢れている。そして、人間社会には、解決すべき課題がどんなに世の中になっても存在し続ける。それらは常に人の興味の対象である。そして、興味の対象に対し、様々な人がそれぞれの好奇心の赴くままに行動を起こす。
 
 ある人は、未知のものを発見する方法を模索する。ある人は、発見されたものの用途を思いつく。そして、既存のものと組み合わせ、目的の働きをするものを発明する。また、ある人は、発明品を知ってその機能に興味を持つ。そして、実際に発明品を使用して、生活の中の困りごとを解決する。
 
 このように、様々な人が好奇心を通してつながることで、文化は発展し、生活スタイルが変化してゆく。人類が存在する限り、好奇心は全ての人に発見や発明を促し、文化や生活を豊かに発展させる原動力であり続ける。


人を能動的にする力 

 
 個人の生活に対しても、好奇心が持つ影響力は大きい。人は日々の生活の中で、大小様々な選択を積み重ね、人生を作り上げて行く。人生の選択において、好奇心は決定的な役割を果たす。
 
 日々の生活の何度も訪れる選択の場面で、人は、その時点の状況に流されるか、自発的に進む方向を決めるか、どちらかの行動をとる。無論、自分自身で人生を築き上げているという実感を得るために、自発的に進む方向を選択し、行動を起こすことが望ましい。
 
 この自発的な行動を促すのが好奇心である。人は、自分に興味を抱かせるものに向かう場合しか、自発的に行動を起こせない。関心が持てないことを敢えて行う人などいないのだ。従って、好奇心旺盛な人ほど、興味・関心を抱く対象が多く、行動の選択肢も増えることになる。
 
 自分がやりたいことに没頭している好奇心旺盛な人に接すると、よくそこまで能動的に様々な活動をこなせるものだと、そのエネルギーの高さに感心してしまう。また、楽しそうに自分が望む人生を作り上げて行く姿を見て、羨ましく思ってしまう。
 
 一方で、日々の生活の中では、自発的にやりたいことを見つけられず、現状維持を選択してしまうことも多い。このような選択が続くと、同じ行動の繰り返しで生活がマンネリ化してしまう。歳をとり、子供から社会人へと立場が変わってゆくと、マンネリ化は顕著になる。忙しさのせいもあって、日々の行動がどんどんパターン化してゆく。
 
 マンネリ化した状態が続けば続くほど、現状維持を続ける方が安心で、新しいことを行うのが面倒に思えてくる。その一方で、新しい行動を起こせない自分に嫌気がさしてしまう。そして、自分自身で人生を作り上げることへの自信を失ってしまう。
 
 このように、好奇心は生活の活力に大いに影響する。生活のマンネリ化を打破するため、自らの好奇心を高め、興味・関心を広げたいと誰もが願う。しかし、好奇心というものは、意図的に高めようとしても、簡単にコントロールできるものではない。
 
 このサイトは、好奇心の源泉を探り、好奇心を減退させる要因を見つけ、最終的に好奇心を高める方法を見出すことをテーマとする。次のページでは、好奇心の源泉について考える。