驚きという快楽
好奇心を生み出す源泉には、もう1つ重要なものがある。それは驚きだ。もう少し具体的に言えば、自分のイメージと異なる意外性に面白いと感じる驚きだ。
人は、興味を抱かせる未知のものに触れて驚き、興奮をともなう面白さを感じる。この興奮するほどの面白さは、未知のものに触れる前の想像が生み出すイメージと、実際に触れて知る事実とのギャップによって生まれるものだ。
この面白いという感情は、驚きという刺激に対して、脳が快感を感じることで生じる。そして、もっと多くの驚きという快感を得ようと、驚きを与えてくれる対象をより深く知ろうとする。このような快楽に根ざし、特定の対象に抱く強い関心を知的好奇心という。
この知的好奇心の源にある快楽は強力だ。それは、この快楽が、飲酒や喫煙のような嗜好物の摂取と同じように、依存症を引き起こす類のものだからだ。このため、知的好奇心の対象を一度持てば、継続的に、その対象についての情報を集めたり、その対象をいじって変化させたり、シチュエーションを変えて繰り返し体験したりして、その対象にハマることになる。
知的好奇心の対象にハマることは、とにかく楽しい体験であり、人をアクティブにする。研究者やアーティストが長期間、集中して研究や創作に没頭できるのも、強く惹きつけられる知的好奇心の対象を持っているからに他ならない。
前述の恐怖心に基づく好奇心も、様々な危険回避の方法を探すうちに、次第に関連する新たな情報やものに触れることが楽しくなり、知的好奇心に変わってゆくことが多い。
この知的好奇心は、前述の恐怖心に根ざした好奇心と同様に、興奮を与えてくれる興味対象を深く知ろうとする、自発的な行動を促す。結局のところ、好奇心の源泉は、恐怖や驚きといった、未知の対象に触れる際の感情の高まり、つまり興奮にあると言える。
好奇心を引き出すには、特定の対象に触れる場面で、感情を平常心から興奮状態に変化させる必要がある。しかし、感情を意図的に操作し、好奇心を高めることは非常に難しい。次のページでは、その難しさを具体的に説明する。